最初に、深大寺がある調布市周辺の地形の特徴について紹介しましょう。
以下は、調布市の資料から抜粋したもので、「深大寺城址」にも書きましたが、重複を厭わずもう一度整理しておきます。
・ 調布市は、武蔵野台地の南西部に位置し、多摩川がこの武蔵野台地を浸食してできた三つの段丘面からできている。
・ 三つの段丘面のうち、標高が最も高いのが武蔵野段丘面、ついで立川段丘面、最も低いのが多摩川低地である。
・ 段丘面と段丘面の間は、崖や急斜面になっており、武蔵野段丘面と立川段丘面の間の斜面が「国分寺崖線」、立川段丘面と多摩川低地の間の急斜面が「府中崖線」と呼ばれている。
・ これらの崖線は、蛇行しながらほぼ東西に走っているが、急峻な斜面からは地下水の湧出があり、調布市を流れる野川、入間川、仙川の主な水源となっている。
■ 深大寺周辺の地形の特徴 深大寺周辺は、国分寺崖線からの湧水が野川に流入する際、ほぼ南北にに流れて武蔵野段丘面を浸食し、谷を形成して国分寺崖線を分断し、後退させてできた地形、すなわち谷戸(谷津、谷地と呼ばれることもある)地形の複雑な形状になっていると見受けられます。
このため、湧出する水の量は極めて豊富で、古代から田畑を潤し、人々の信仰を集めてきたとされています。
■ 深大寺の主要な建物 深大寺は、天台宗の別格本山で、水と緑に囲まれた美しい寺院です。比叡山延暦寺が総本山です。
◇ 山門 山門は、参道から石段を上ったところに在り、正面には「浮岳山」の山号額が掲げられています。
1865年(慶応元年)の火災の被災を免れた建物で、現在、山内で一番古い建物だそうです。
◇ 本堂 幕末の火災で焼失した後、1919年(大正8年)に完成したものだそうです。
ご本尊は、阿弥陀如来だそうです。唐破風の向拝がついています。
◇ 元三大師堂 本堂の火災の際、類焼したため、本堂に正対して左側の崖を削って用地を造成し、再建したそうで、本堂より一段高い位置にあります。
元三大師像が安置されているそうです。
元三大師は、如意輪観世音菩薩、或は不動明王の化身とも言われているそうで、あらゆる魔を祓い、厄を落とすことで古代から信仰を集めてきたそうです。
比叡山には、元三大師(慈恵大師良源)によって開かれた元三大師堂があるそうです。
◇ 開山堂 1983年(昭和58年)に新築された奈良時代様式の建物で、ご本尊は薬師如来三尊(薬師如来、弥勒菩薩、千手観音)だそうです。
深大寺開山の祖である満功上人、恵亮和尚もお祀りしてあるそうです。
◇ 深沙大王堂 深大寺に伝わる「縁起絵巻」は、「親の許しが得られない男女の縁を、土着の神様である深沙大王が取り持ち、めでたく結ばれました。
生まれてきた子供、後の満功上人は、父親から『深沙大王をお祀りしなさい』と告げられたため、出家して733年に寺を建立しました。
この寺が深大寺です」と伝えているそうです。
当時は法相宗でしたが、859年に天台宗に改宗したのだそうです。
また、深大寺という名称は、男女の仲を取り持った深沙大王に由来しているそうです。
最近は、恋を成就させるパワースポットとして若いカップルの参拝が多いそうです。
■ 句碑 深大寺の境内には、多くの句碑や歌碑がありますが、そのうち二つを紹介します。
◇ 松尾芭蕉 1966年(昭和41年)、秋田県の象潟港の工事の際、海中から大きな石を引き上げたところ、仏像が彫られていたそうです。この仏道は、後に慈覚大師自刻の延命観音と判明し、縁あって深大寺に奉安されたそうです。
その関係で、芭蕉の「象潟や阿免尓西施が合歓能花」(きさがたや雨に西施がねむの花)が刻まれた碑が建立されたようです。
(西施:春秋戦国時代の越の王勾践が、呉王夫差に献上した美女で、夫差がこの女性の美しさに溺れている間に呉は越に滅ぼされた)
◇ 高浜虚子 高浜虚子は、子規に師事した俳人で、愛媛県松山市の出身ですが、晩年、調布市に居住していた関係で句碑が建設されたそうです。
「遠山に日の当たりたる枯野かな」と刻まれ、胸像も建立されています。
■ 参道 参道には多くの蕎麦屋さんが軒を連ねています。
蕎麦が深大寺の名物となった背景には、蕎麦の栽培、水車を利用した製粉、蕎麦打ち、釜茹でなどに必要な豊富な湧水があったことなどが挙げられると思います。
また、調布市に居を構えている水木しげるの「ゲゲゲの鬼太郎」などの妖怪をテーマとした茶屋があります。
鬼太郎グッズや鬼太郎をイメージした食べ物などがあるそうです。
■ 湧水 崖線の急斜面から湧出する清水は、斜面を下りながら水量を増し、やがて逆川となり、神代植物園の分園である水生植物園を潤し、野川に注いでいます。
◇ 深大寺境内の湧水 境内においても崖線の斜面からの湧水が各所に見られます。三元大師堂と本堂を結ぶ回廊の付近にも湧水が見られます。
◇ 深沙大王堂裏の湧水源 深沙大王堂の裏手には湧水源があります。
この湧水はやがて小川になり、参道横を流れたり、逆川に流れ込んでいます。
◇ 不動の滝 水生植物園入り口前の道路を挟んだ反対側に不動の滝があります。
この滝は、東京都が2003年(平成15年)に指定した「東京の名湧水57選」の一つです。
今日はここまでです。
ご来訪有難うございました。